極北の地に魅せられた写真家 星野道夫さんの旅路をたどる

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Posted:6月25日

■クリル湖へ  7月31日、成田空港からウラジオストクまでは2時間半だった。1泊後、約3時間のフライトでカムチャツカ半島の最大都市ペトロパブロフスクカムチャツキに着いた。  8月3日、クリル湖までの約200キロは地元の観光会社でチャーターしたヘリで向かう予定だった。しかし、悪天候のため、ヘリが飛べないという。  「カムチャツカはいきなり、すべてを見せてくれないのですよ。見せるかどうか、あなたがどんな人か様子を見ているのです」  現地のロシア人はユーモアを含んだ言い方をした。同行した中川支局長、助手のタチアナさんと一緒に苦笑いするほかなかった。  1日半、天候の回復を待った。8月4日午後1時すぎようやく離陸した。低く垂れ込めた雲と深い緑に覆われた大地の隙間を飛ぶ。時折、強風にあおられながら、約1時間半で湖西にあるキャンプに到着した。  クリル湖は約8千年前の火山の噴火でできたカルデラ湖だ。カムチャツカ半島のほぼ南端に位置し、世界有数のサケの産卵地として知られる。サケを狙うヒグマが湖周辺で最大で400頭も集まる。周辺はエサとなる松の実やベリー類が豊富で、クマにとっては楽園のような場所だ。  現地は小雨模様。ヘリから降りるとひんやりとした風が吹き抜ける。  すぐそばの道に、黒い物体が落ちていた。クマのフンだ。植物の種のようなものが混じっている。こんな身近にいるのかとゾッとする。  数十メートル歩くと電気柵がある。ここがキャンプの入り口だ。電気柵で囲まれた内部には、滞在者に食事を提供する食事棟、監督官たちが滞在するロッジ、水洗トイレなど比較的新しい建物が並ぶ。「バーニャ」と呼ばれるロシア式サウナまであった。  滞在したのは大きなかまぼこ形のテントで、折りたたみベッドを6台程度並べることができる広さがあった。天候が悪く、予約にキャンセルが出たおかげで使用することができた。  食事は1食800円程度。希望すれば、一日3食とも地元料理が食べられる。食堂のおばさんは「明日は何が食べたい?」と毎日聞いてくれる。  透き通ったサケのスープ「ウハー」や水ギョーザのような「ペリメニ」、自家製イクラをのせた黒パンなど工夫を凝らしたロシア料理を振る舞ってくれた。ベリーのジュース「モルス」や紅茶のためのお湯も用意されている。十分すぎるほど豊かな食事だった。

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